職人が誇りをもって仕事ができる場となっているエルメスには、マーケティング部門がありません。これは、商品を販売する世界的企業では珍しいことですが、エルメスに言わせると、クリエイティブチームがエルメスの価値やスタイルを熟知しているため、マーケティングそのものが必要ないという判断の結果なのだそうです。そして、エルメス全体が、客に迎合する売れる商品ではなく、まずは自分たちが作りたいという考えを余すところなく反映させて、作り手が客を驚かせるような商品を作って提供することを使命だと考えています。顧客に満足いくような最高の商品をつくることのみを目標とし、エルメスではたらく全ての人が、自分たちのことを職人、デザイナー、販売員などを合わせた集合体だという意識に立っていると考えられます。

このようなエルメスの思想に世界中のたくさんの人が共感し、エルメス商品を愛する顧客となり、最高のブランドという評価が与えられているのです。その価格がなかなか下がらない商品があるのはこうした結果であり、エルメス買取の市場が活発な理由でしょう。

2000年代後半の世界的な不況は、ファッション業界にも大きな影響を与えることとなりました。そして、贅沢品、高級品は2つに区分されるようになったとエルメスは分析しています。一つは財産や富を見せびらかすもので、もう一つは品質の高さ、洗練されたものに裏打ちされるもので、エルメスは当然、後者の方であるとし、徐々に前者は見直されていくだろうと考えているようです。このような信念のもと、それに共感する人々によってエルメスは支えられ、現在もなお高級ブランドとしての地位を確立しているのです。