エルメスは馬具工房から始まった気風を今にも受け継ぎ、職人を非常に大切にするブランドとしても知られています。エルメスの商品は現在でも、商品一つ一つが、職人による手作業によって作られており、職人に対する絶大な信頼があることを物語っています。高価買取商品として有名なエルメスのバッグを初めとして、エルメスの商品は、一人の職人が最初から最後の工程まで、すべて一人で行っています。どんなに優秀な職人でも、一つのバッグを完成させるには2日~3日かかるそうです。しかし、職人が一つの商品をつくることで愛情が注ぎ込まれ、すべてが「一点もの」に近いこだわり抜かれた作品に仕上がるのです。このような環境を与えられた職人も、エルメスで働けていることを誇り、活き活きと仕事に励んでいます。

また、馬具製造を発祥とするエルメスだからこそ持っている技術も無数にあります。縫い方を例にしてみます。耐久性が必要な馬具を製作する場合において、「クージュ セリエ=サドルステッチ」という縫い方があります。あらかじめ蜜蝋が染みこませて強度を上げた麻糸を使い、錐(きり)を使って革に穴を空け、2本の針で縛るように縫っていくという方法です。これにより、糸が弛んで革とずれてしまわず、1本の糸が切れてしまってももう1本の糸で留めておけるのでほつれも防ぐことができ、長年使用することも可能となるのです。

効率や利益を重視するならば、機械化していったり、より人件費が安い海外に生産拠点移したりして、大量生産を行うことも可能なはずです。しかし、エルメスはあくまでも、最高品質の製品を、顧客に届けようとする馬具工房時代からの企業文化を変えようとしないプライドを持っています。